西洋法制史 第四部 近世の法と社会

中山 元

16 身分制議会と絶対主義国家

16.1 旧ヨーロッパの身分制議会
▼旧ヨーロッパ世界とはどのようなものか 
▼アリストテレスによる広義の倫理学の捉え方は
▼旧ヨーロッパにおける家政学とは
▼家父の典型像
▼まったき家とは
▼家の平和と家の自由
▼人的結合国家から制度的領域国家へ
▼同族的な国制とは
▼盗賊は何に関心を抱いたか
▼同族の諸権利と自由
▼身分と身分制議会
▼身分制議会の役割
▼高等法院について
▼家産制とは
▼絶対主義における家産制の役割
16.2 近代国家の基礎理論 主権論と新ストア主義
▼マキャヴェリズム
▼ボダンの主権論
▼その重要な特徴
▼主権者が従う自然法の主な内容
▼インペリウムとドミニウムの区別
▼臣民の位置
▼主権者と身分制議会との関係
▼国家の源泉は何か、家父とは誰か
▼家の経済学と国家の経済学
▼リプシウスの役割
▼リプシウスの合法的な君主制の理念
▼ボタンが目指したもの
▼リプシウスが目指したもの
▼ヨーロッパの主権的な国家の誕生
16.3 絶対主義の時代 社会的な規律化とポリツァイ
▼帝国の解体と領邦君主
▼人々の精神における地殻変動
▼ウェストファリア条約の役割
▼帝国からラントの連合体へ
▼絶対主義を創造したものは何か
▼社会的な規律化とは
▼ウェーバーの合理化やエリアスの文明化の概念との違い
▼社会的な規律化の概念の特徴
▼エストライヒによる時代区分
▼規律の概念と絶対主義の概念
▼王権神授説の機能
▼エストライヒによる絶対主義国家の社会構造
▼社会的な規律の三つのレベル
▼社会的な規律化の目指したもの
▼ポリツァイとは何か
▼ポリツァイの役割
▼良きポリツァイとは
▼帝国ポリツァイ条例の制定
▼下からの規律化
▼ポリツァイの新たな機能
▼ポリツァイ国家の役割
▼ポリツァイ学の登場
▼政策手段としてのポリツァイ

17 パンデクテンの現代的慣用

17.1 ユス・コムーネとユス・プロプリウム
▼パンデクテンの現代的慣用とは何か
▼ローマ法の普遍性の根拠
▼政治的なローマ理念
▼文化的なローマ理念
▼ユス・プロプリウムとの関係その実例
▼ドイツ法学が試みたもの
▼改革法典とは
▼その実例
▼パンデクテンの現代的慣用の意味
▼ローマ法の実用化が可能になったのは
▼ローマ法の継受と現代的慣用
▼訴訟法における証明理論の適用
▼既存の証明理論の破綻
▼法律に証明が必要な場合
▼公知性とは何か
▼証明理論の転換
▼ローマの理念の無効化
17.2 パンデクテンの現代的慣用
▼17世紀後半のドイツ帝国における複数の法源
▼法律解釈の基準は何か
▼裁判規範を発見する際に考慮すべき点は
▼ゲルマン的誠実の原理
▼現代的慣用の実例
▼現代的慣用は近代的な法典の編纂にどのように寄与したか
▼バイエルンの民法典
17.3 パンデクテンの現代的慣用の展開
▼二人の実務的な開拓者
▼カルプツォフの功績
▼メヴィウスの功績
▼地域に固有な法律の優越性の承認
▼カルプツォフの新しさ
▼間接故意の理論
▼ヨーハン・シルターの功績
▼ザムエル・シュトリュクの功績
▼ハレ大学の地位
▼シュトリュクの私法学
▼現代的慣用の終焉とその影響

18 自然法論の展開

18.1 自然法論と人間の理性
▼理性法論とは
▼理性の新しい概念
▼グロティウスの法理論における理性
▼古代の自然法論の登場
▼ギリシャにおける不文法
▼キリスト教的な自然法論の特徴
▼自然法と永久法
▼世俗的な自然法論の先駆
▼サラマンカ学派とその代表的な人物
▼その理論の特徴
▼新大陸の発見の影響
▼ビトリアの「神学的再考察」
▼バリアドリーの大論争とは
18.2 ヨーロッパ大陸における自然法論の展開
▼ネーデルランド運動とは
▼新ストア主義の果たした役割
▼レイデン大学の役割
▼17世紀の新旧論争の意味
▼問題の設定における根本的な転回
▼グロティウスの功績
▼グロティウスの自然法の理論の欠陥
▼グロティウスを賞賛する呼び名
▼グロティウスによる人間の本性
▼合意は守られるべし
▼プーフェンドルフの役割
▼「人および市民の義務について」の果たした役割
▼プーフェンドルフが依拠した人間性の二つの原理
▼二重契約論とは
▼抵抗権の否定の意味
▼バルベイラクによる翻訳の功績
▼メヴィウスの目指したもの
▼トマジウスの主張
▼ジャン・ドマの体系
▼ヴォルフの功績
▼幾何学的方法の役割
▼ヴォルフの福祉国家思想
▼相対的な自然法の重要性
18.3 イングランドにおける自然権の理論
▼法の概念と権利の概念
▼ホッブズの自然権の理論
▼ロックの自然権の理論

19 啓蒙主義と法典編纂

19.1 啓蒙とは何か
▼カントの言葉
▼ヴォルテールの言葉
▼啓蒙主義運動の舞台は何か
▼フーコーの言葉
▼啓蒙と自然法
▼啓蒙の批判精神と絶対主義の矛盾
▼まったき家の解体と近代家族の登場
19.2 刑事司法における啓蒙主義
▼フリードリヒ大王の刑事司法改革
▼民事訴訟における体験判決の廃止
▼刑事訴訟における菜華軒の維持
▼死刑の廃止と重農主義
▼贖罪思想から社会工学への移行
▼モンテスキューによる罪刑均衡の原理
▼野蛮な刑罰の廃止
▼刑法の世俗化
▼カラス事件
▼ベッカリアの業績
▼ベッカリアによる刑事司法システムの改善
▼監獄改革の動機
▼監獄改革はどうして挫折したか
▼死刑や苦痛系から自由刑へ
19.3 法典編纂の時代
▼ベンサムの法思想
▼法典編纂という言葉の登場
▼自然法的法典編纂とは
▼法典編纂と啓蒙の精神
▼法典編纂の課題
▼法典編纂の条件
▼法典の宛先
▼プロイセン一般ラント法の編纂
▼大法官コックの司法改革
▼フリードリヒ法典の目標
▼フリードリヒ大王の「立法論」
▼プロイセン法の精神
▼アルノルトの訴訟
▼カルノーの一般法典草案
▼プロイセン一般ラント法の特徴
▼その欠陥
▼マリア・テレジアの立法事業
▼マルティーニの自然法論
▼サイラーの自然法論
▼オーストリア一般民法典の特徴
▼フランス民法典の編纂
▼共通慣習法の形成
▼ポティエの功績
▼民法典の父
▼革命期の法典編纂構想
▼ナポレオン法典の完成
▼フランス民法典の特徴
▼フランス民法典における女性の地位

課題

■課題一 この時代のドイツの国制について、文献(1)、文献(2)、文献(3)、文献(4)、文献(5)などで確認せよ(第一六章)
■課題二 この時代のドイツの国家思想について、文献(6)、文献(7)、文献(8)で調べよ(第一六章)
■課題三 ドイツの近世の私法の歴史について、文献(9)、文献(10)、文献(11)、文献(12)を調べよ(第一七章)
■課題四 グロティウスと自然法について、文献(13)、文献(14)、文献(15)で確認せよ(第一八章)
■課題五 自然法の歴史について、文献(16)、文献(17)、文献(18)を調べよ(第一八章)■課題六 近代の法典編纂と啓蒙の概念について、文献(19)、文献(20)、文献(21)、文献(22)を確認せよ。

-------------------文献リスト-----------------------------------
文献(1)O・ブルンナー『ヨーロッパ その歴史と精神』(岩波書店、1974年)
文献(2)W・エーベル『ドイツ立法史』(東京大学出版会、1985年)
文献(3)O・ヒンツェ『身分制議会の起源と発展』(創文社、1975年)
文献(4)K・クレッツェル『ゲルマン法の理念と現実 ドイツ法史の新しい道』(創文社、1989年)
文献(5)成瀬治『絶対主義国家と身分制社会』(山川出版社、1988年)
文献(6)山内進『新ストア主義の国家哲学 ユストゥス・リプシウスと初期近代ヨーロッパ』(千倉書房、1985年)
文献(7)G・エストライヒ『近代国家の覚醒 新ストア主義・身分制・ポリツァイ』(創文社、1993年)
文献(8)M・シュトライヒ編『一七、一八世紀の国家思想家たち』(木鐸社、1995年)
文献(9)H・ミッタイス『ドイツ私法概説』(創文社、1961年)
文献(10)F・ヴィーアッカー『近世私法史』(創文社、1961年)
文献(11)吉野悟『近世私法史における時効』(日本評論社、1989年)
文献(12)河上倫逸編『ドイツ近代の意識と社会』(ミネルヴァ書房、1987年)
文献(13)松隅清『グロチュースとその時代』(九州大学出版会、1985年)
文献(14)大沼保昭『戦争と平和の法 フーゴー・グロティウスにおける戦争・平和・正義』(東信堂、1995年)
文献(15)柳原正治『グロティウス』(清水書院、2000年)
文献(16)A・P・ダントレーヴ『自然法』(岩波書店、1952年)
文献(17)和田小次郎『近代自然法学の発展』(有斐閣、1951年)
文献(18)H・ティーメ『ヨーロッパ法の歴史と理念』(岩波書店、1978年)
文献(19)屋敷二郎『紀律と啓蒙 フリードリヒ大王の啓蒙絶対主義』(ミネルヴァ書房、1997年)
文献(20)石井三記ほか『近代法の最定位』(創文社、2001年)
文献(21)石井三記『18世紀フランスの法と正義』(名古屋大学出版会、1999年)
文献(22)石部雅亮『啓蒙的絶対主義の法構造』(有斐閣、1969年)

『概説 西洋法制史』(ミネルヴァ書房)に依拠